2016年7月11日 (月)

存在が「疑わしい」コンソリダ・アンビグア 
Consolida ajacis 'Misty Lavender'

コンソリダ・アヤキス 「ミスティ・ラベンダー」(Consolida ajacis 'Misty Lavender':キンポウゲ科コンソリダ属)が咲きました。


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コンソリダ属は地中海地方から中央アジアにかけて40〜50種が知られています。
近縁のデルフィニウム(Delphinium)属とは花の構造が少し違っていますが、デルフィニウム属が多年性植物なのに対し、コンソリダ属は一年性です。
この2種は葉の様子にも違いがあり、コンソリダ属は掌状に細かく分かれています。

コンソリダ属は花弁状の萼片は5枚あり、1番上の萼片にはしっぽがあり、その中に距が入っています。
雌しべを包み込むように合着した2枚の(1枚に見える)花びらが本当の花弁です。

コンソリダ・アヤキスは、以前はコンソリダ・アンビグア(Consolida ambigua)とも呼ばれ、ウクライナ、トルコからバルカン半島を経て、イタリア、フランスなどの冷涼な温帯に自生しています。
しかし今日では世界の多くの温帯地方や亜熱帯地方、アフリカ、アジア、オーストラリア、北米に帰化しているといわれています。

茎は無毛かまばらに毛が生えています。直立して高さが60〜90cmになり、時には1mを越えるほどになります。
基部の葉は3裂し、その裂片はさらに細裂して掌状になっています。
上部の葉は多細裂し、線状をしています。

6月から7月ごろ、茎の先の総状花序に、ピンク、サーモンピンク、エンジ、白、紫などの花を咲かせます。
茎の下の方で枝分かれすることは少なく、普通は花序で枝分かれします。

「ミスティ・ラベンダー」は、花色はやや青みがかったピンクで、放射相称に開いた花弁が5枚以上ある八重咲き園芸種です。

正面から見て雄しべがもろに見え、コンソリダに別の花がくっついているように見えます。
他のコンソリダとは雰囲気が違って見えます。
距には勢いがなく、だらしなく巻いています。

日の当たる、適度に肥え、水はけの良い湿り気のある土がお気に入りのようです。
なお種子の発芽には覆土が必要です。

ところでコンソリダ・アヤキスについては我が国の園芸界では以下の誤りが訂正されておらず、私が一番頼りにする園芸植物大辞典(小学館)も1994年出版なので、古い情報となっていて誤っています。
コンソリダ・アヤキスは、1753年にリンネによってデルフィニウム・アヤキス(Delphinium ajacis)と命名されましたが、1853年にコンソリダ属に再分類され、コンソリダ・アヤキスという現在の名になっています。

しかし同じくリンネが1762年に命名したデルフィニュウム・アンビグウム(Delphinium ambiguum)は、デルフィニウム・アヤキスと混同されることが多く、コンソリダ属が立てられた時にデルフィニュウム属であったにもかかわらず無理矢理(というか誤って)コンソリダ属に再分類されました。

したがってコンソリダ・アンビグアという植物は存在しないのにもかかわらず、コンソリダ・アヤキスの異学名としてとして紹介されています。
種小名のアンビグアは「疑わしい」という意味ですが、その通りに、疑わしい名です。

英名は forking larkspur, field larkspur, doubtful knight's spur, rocket larkspur です。

属名はコンソリダは古いラテン名に由来しており、傷薬として使われていたことから血を「固める」という意味で、コンソリダと呼ばれていたようです。
種小名は古代ギリシャ・トロイア戦争の時のサラミスの王アイアース(Aias)に由来します。アイアースはラテン語表記(ローマ神話)ではアヤックス (Ajax)となります。

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2016年7月 8日 (金)

斑入り葉のアカンサス 
Acanthus 'Whitewater'

斑入り葉のアカンサス、アカンツス「ホワイト・ウオーター」(Acanthus 'Whitewater':キツネノマゴ科アカンツス属)の初花が咲いています。


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斑入りのアカンサスというと「タスマニアン エンジェル」の名が上がりますが、「ホワイト・ウオーター」はそれより新しい品種で、斑入り葉の「タスマニアン エンジェル」と深緑色葉の「サマービューティー(‘Summer Beauty’)」を交配した品種です。

「サマービューティー」はアカンツス・モリス(Acanthus mollis)とアカンツス・スピノスス (Acanthus spinosus)の交配種と推測されています。

アカンツス・モリスは地中海沿岸から小アジア、北アフリカ原産の常緑性の草本です。
葉は濃いグリーンでツヤがあり、棘のついたギザギザの縁なので花が無くても見間違うことはありません。
種小名のモリスは「軟らかい、軟毛のある」という意味ですが、株全体に全く毛は生えていません。たぶんスピノススに比べると棘が優しいことを示しているのだと推測しています。

スピノススはヨーロッパ南部、東南アジア原産と言われており、建築デザインのアカンサス模様というコリント様式の柱頭の飾りはアカンツス・モリスではなく、このスピノススがモデルになっていると言われています。
モリスは背丈が1m以上になりますが、スピノススは高くても背丈は1mを越えることはありません。
葉はモリス以上に深裂し、裂片の先には硬いトゲがあります。この特徴がスピノスス(「トゲの多い」という意味)という種小名になっています。

アカンサス・スピノススは、アカンツス・モリスに比べて花の大きさは同じですが、大きさがよりコンパクトで、その分花と花の間が詰まって咲きます。
さらにアカンツス・スピノススは葉に深みと、艶がなく、それが、アカンツス・モリスと同じような葉です。
豪華さと耐暑性を併せ持ち、日本にはうってつけのアカンツスです。

「ホワイト・ウオーター」は「タスマニアン エンジェル」より大きく、花付きも良いといわれています。
今年初めて咲いたので、花茎は途中で伸びなくなり、花は5輪だけです。

花弁に被さっている萼は白色で、ピンクがかっています。
花茎は赤く、斑入りの葉と相成って、美しい姿を見せてくれます。
来年に期待しようと思います。

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2016年7月 4日 (月)

キタイベルさんのオダマキ 
Aquilegia kitaibelii

アクイレギア・キタイベリイ(Aquilegia kitaibelii:キンポウゲ科オダマキ属)が咲いています。


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アクイレギア・キタイベリイクロアチアとボスニア・ヘルツェゴビナの国境にある海抜1831mのディナラ(Dinara)山を中心とした海抜約1200〜1600mの山地に分布しています。

近くには「カルスト」の語源となったスロベニアのクラス地方(Kras、ドイツ語名:カルスト)があり、そこから続く荒涼とした不毛の土地に咲いています。他のヨーロッパ産のオダマキ同様、石灰岩地が好きなようで、カルストに続く石灰岩地の斜面や割れ目、崖で見られます。

草丈は15〜30cmで、花茎上部には腺毛が生えています。
葉は他のオダマキ同様2回3出小葉で、濃緑色の小葉片は無柄で、上面にはかすかに毛が生えていますが、下面には密に生えています。

花は6月に花茎を伸ばし、青紫色や赤紫色の花を3〜6輪開きます。
花の大きさは径2〜3cmで、距につながる花弁は1.7cmほどで、大きく開きます。
距は太く、短くて 0.8〜1cmほど、内側にカーブしています。
雄しべは花弁から飛び出しません。

イタリアにも分布しているというのは誤りで、アクイレギア・ベルトロニイ(Aquilegia bertolonii)と混同されていると言われています。
またアクイレギア・ビスコサ(Aquilegia viscosa)と間違われることがあるようですが、分布域が異なります。
異学名はAquilegia pyrenaica var. kitaibelii や Aquilegia vulgaris var. kitaibelii で、その姿から間違われていたことが多いようです。

種小名は19世紀のハンガリー人のポル・キタイベル(Pál Kitaibel:1757-1817)さんに因みます。
ハンガリーの植物学者や鉱石学者で、テルル(tellurium:レアメタルの一種、太陽電池や各種電子部品の材料)を1789年に発見しています。後に彼より7年早く発見した人がいて、彼の功績にはなっていません。
ビオラ・キタイベリアナ(Viola kitaibeliana)やプリムラ・キタイベリアナ(Primula kitaibeliana)も彼の名に由来します。

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2016年7月 2日 (土)

ツイーディアとオキシペタルムの違い 
Tweedia caerulea f. plenum

八重咲きのツイーディア・カエルレア(Tweedia caerulea f. plenum:ガガイモ科ツウィーディア属)が咲いています。


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ツイーディア・カエルレアはブラジル南部やウルグアイに自生する宿根草で、以前はオキシペタルム・カエルレア(Oxypetalum caeruleum)と呼ばれていました。

以前分類されていたオキシペタルム属はオキシペタィナエ節(Oxypetalinae)の中では一番種類が多く、約120種が知られています。
主としてメキシコからアルゼンチンまで南アメリカの中〜東部に分布しています。
筒状花で、杯部から先で5深裂し、裂片は披針形をしています。
花冠の筒部に合着する雄蕊柱があり、蘭に見られるような葯帽や花粉塊柄を持ち、雄蕊柱から出て、柱頭(雌しべの先)を刺激する役目の付属物(副花冠)を形成しています。

ツイーディア属はオキシペタルム属と同じ特徴を持つのでオキシペタルム属に含まれていましたが、柱頭が2裂するので、ツイーディア属に再分類されました。

ツイーディア属は1834年に英国の植物分類学者フッカー(Hooker, W. J. & Arnott, G. W. A.)さんたちにリストアップされました。その後に何人かの植物学者に取り上げられましたが、その都度、基準標本がちがっていました。

1904年にドイツの植物学者マルメ(Malme,G. O. A.)さんがツウィーディア属について、概念を新たに立て直したのですが、基準種がどれであるかを示すことはしませんでした。
最初に基準種を示したのはドイツの植物学者メイエル(Meyer, T.)さんで、1944年にツウィーディアの基準種としてツイーディア・ブルノニス(Tweedia brunonis)をあげました。
フッカーさんらが1834年にツイーディア属について解説した時に、花冠の形と2裂する柱頭という二つの特徴をあげていました。
ところがツイーディア・ブルノニスについてのフッカーさんらの解説の中に「分かれていない柱頭」という記載があり、メイエルさんの基準標本を否定する重大な矛盾にぶつかったのです。
しかしこのことは1989年になって、英国の植物学者ルア(Rua, R. H.)さんが柱頭が短く2裂していると指摘して決着がつきました。
フッカーさんらはツイーディア属に関する誤りを犯しており、後に彼らの分類学的見解は否定され、オキシペツラム属はいくつかの属に分けられました。
(以上Rapini,A. Pereira,J.F. & Goyer,D.J. Towards stable generic circumscription in Oxpetalinae(Apocynaceae). Phytotaxa. 2011,26: 9-16 に基づく)

ツイーディア・カエルレアは春から秋にかけて葉脇から蕾を出し、集散花序に2〜4輪の花をつけます。
花冠は直径3cmほどで、短い筒部があり、5深裂しています。

この八重咲き種は八重や半八重をつけますが、花弁中心の付属物(副花冠)が発達したものだと思います。
というのは八重は副花冠があるのかどうかもわからないからで、八重の部分は副花冠だと推定できます。
八重の中心の花弁はほとんど開かず、バラの花のような感じです。

ガガイモ科の花はアリにとって好ましい香りがあるのでしょうか、蟻が沢山やって来ます。
アリの大きさでは虫媒昆虫にはならず、副花冠を動かせるぐらいの大きな昆虫が来ないと種子はなかなか稔らないようです。

葉は対生し、長楕円形で、先は丸みを帯びています。
葉をつまむとベルベットのようなふかふかした厚みがあります。
葉柄は短く、枝から直接出ているように見える葉もあります。
葉の付け根は湾入する形になる「心形」をしています。

英名は Blue Milkweed で、Milkweed は乳草と訳したらいいのでしょうか。ガガイモ科の特徴が細長い莢に入った種子と切ったときに出る乳液で、ツイーディ ア属に限らず、同じ特徴を持つアスクレピアスも Milkweed と呼ばれています。

種小名カエルレアは「青色の」という意味で、花の色を指しています。
属名のツイーディ アは、エディンバラ王立植物園の庭師のジェームズ・ツイーディ ー( James Tweedie:1775-1862)さんに因みます。
ツイーディ ーさんは19世紀の初めに南アメリカに探検旅行をしましたが、50代の時に南アメリカに移住し、新大陸を旅して、新しい植物を採取して回りました
ヨーロッパにペチュニアを紹介したことで知られています。

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2016年6月28日 (火)

あかるい忘れな草 
Myosotis scorpioides x variegatus

斑入りのミオソチス・スコルピオイデス・バリエガツス(Myosotis scorpioides x variegatus:ムラサキ科ワスレナグサ属)です。


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ミオソチス・スコルピオイデスは宿根する忘れな草で、元々はヨーロッパやアジアに自生していました。
今では世界中の至る所で見ることができ、場所によっては有害植物と見なされています。

パルスツリス(Myosotis palustris)という異学名を持っていますが、「沼地の、沼沢地の」という意味で、自生地を指し、湿原や流れのそばなど、湿った場所に自生しています。
一般名も「水棲忘れな草(water forget-me-not)」と呼ばれています。

草丈は15cmから60cmにもなり、立ち上がる性質があります。

普通種と同じように、長さ8〜10cm、幅2cmほどの全縁の細長い葉で、互生します。
ミオソチス・スコルピオイデス(普通種)の葉は微毛が生えていたり生えていなかったりしますが、この斑入り葉種は微毛が少なく、つるりとした葉にクリーム色の斑が入っています。
葉だけでも充分楽しめます。

先で5裂する高盆型で、明るいブルー(空色)の径8mmほどの花を咲かせます。
中心部(目)に黄色い膨らみ(鶏冠状突起)を持つ空色の花を互散花序(サソリ型花序)につけ、常に2〜5輪がポツポツと咲いていきます。
花期は長く、春から霜が降りる頃まで咲いています。

山野草の用土では、水切れしやすいので注意が必要です。
暑さが心配なところでは、山野草用土で株元が水につかるようにしていてもいいと思います。

海外ではこの斑入りの忘れな草は異学名のミオソチス・パルスツリスの方で呼ばれており、園芸品種名として「バリエガツス(Myosotis palustris 'Variegatus')」と名付けられているようです。

属名ミオソティス(Myosotis)」は、ギリシア語の「myos(ハツカネズミ)」と「otis(耳)」の造語で、ハツカネズミの耳のような葉の形に由来します。実際にはそのような小さい葉のミオソティスを見たことはありません。
種小名の「scorpioides(スコルピオイデス)」 は「サソリの尾に似た」という意味です。

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Acanthus balcanicus