2017年4月24日 (月)

ダルマチアのヒアシンス 
Hyacinthella dalmatica

ヒアキンテラ・ダルマチカ(Hyacinthella dalmatica:ユリ科ヒアキンテラ属)が咲いています。


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ヒアキンテラ属はトルコを中心にヨーロッパからアジアに約18種が分布しています。
ムスカリに近縁の球根植物で、過去にはヒアキンツス属(Hyacinthus)に分類されていたことがあります。
夏に高温の時期を要し、乾燥した丘陵の瓦礫地に自生します。
球根にはしばしば粒状の結晶(粉)を吹きます。
葉は2〜3枚出現し、花は淡青色から濃紫色の口の開いた鐘型で、短い花梗があります。
ムスカリ属は花の先端が萎んでいること、またスキラ属の花被が分離していること、ヒアキンツス属とは花被先端が細く反り返らないことで区別されます。

ヒアキンテラ・ダルマチカはバルカン半島北西部に自生していといわれていますが、実際はヨーロッパ南東部の地中海沿岸に分布しているようです。

球根園芸で著名な英国のブライアン・マシュウ(Brian Mathew:1936–)さんの古い著書「小さな球根(The Smaller Bulbs, 1988)」には、ヒアキンテラ・ダルマチカはヒアキンテラ・パレンス(Hyacinthella pallens)の異学名とあり、球根専門園芸家がヒアキンテラ・パレンスをヒアキンテラ・ダルマチカという名で流通させていると書かれています。

ところが今日では、the Plant Listにはヒアキンテラ・パレンスはヒアキンテラ・リューコファエア (Hyacinthella leucophaea)の異学名となっています。

このような事情から推測するに、ヒアキンテラ・ダルマチカには地方変異があり、以前より混乱が生じていたと思われます。

さてヒアキンテラ・ダルマチカの花は初春に花序を出しますが、我が家のダルマチカは今ごろ咲き出しました。
花序を伸ばして、最終的には背丈は10〜20cmになります。
花柄は上に向けてつき、花もやや上向きから横向きに開きます。

花は長さ1cm近くもあり、ムスカリなどに比べると大きく、細い鐘型をしています。
花披は先で浅く6裂し、裂片は反り返ります。
雌しべ1本、雄しべ6本で、花から出ることはありません。
花色は透明な印象の薄青色から明るい青紫色をしています。

幅のある披針形の葉は花序を抱えるように、2〜3枚が根出します。

属名はギリシャ神話のアポロに愛されたスパルタの王子ヒアキントスに由来します。
種小名ダルマチアはクロアチア共和国の南部に当たる地域、アドリア海沿岸地域一帯を指す歴史的名称に因みます。

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2017年4月21日 (金)

黄色のムスカリ2種 
Leopoldia Tenuiflora & Muscari macrocarpum

よく似た花のレオポルディア・テヌイフロラ(Leopoldia tenuiflora:ユリ科レオポルディア属)とムスカリ・マクロカルプム(Muscari macrocarpum:ユリ科ムスカリ属)が咲きました。

レオポルディア属とムスカリ・マクロカルプムはよく似ていますが、どう違うのか比較してみました。

レオポルディア属はムスカリに近縁で、以前はムスカリ属の下位属としてレオポルディア亜属に含まれていました。だから似ているのは当然です。

レオポルディア属は西はカナリア諸島から東はイランまで、地中海沿岸や近接する諸島部に広く分布しています。
ムスカリミア亜属はレオポルディア属に比べると分布範囲が狭く、エーゲ海からトルコにかけての地域の岩場に自生しています。

レオポルディア属は、花序の下部に咲く稔性花は花筒が長く、褐色から黄色、時には白色をしています。
不稔花は青や藤色時にはピンクをしています。

ムスカリミア亜属は、レオポルディア属と同様、花序下部の稔性花は花筒が長く、褐色から黄色、白色の花をつけます。上部の小さくて無花柄の不稔花は紫紅色をしています。
色的にはよく似ています。

しかし花筒の先をみると、レオポルディア属は6個の膨らむ黒っぽい副花冠(ワスレナグサの花弁にある突起のような付属物)をつけます。
ムスカリミア亜属は花筒の先には副花冠がなく、口を萎めています。

根については両方とも大きな球根で、レオポルディア属は地上部が枯れると根も枯れますが、ムスカリミア亜属は、根は多年性で、太く長い根(紡錘根)は、地上部がなくなっても枯れません。したがって夏も灌水は欠かせません。

一見よく似ていますが、レオポルディア属は花の先が萎んでいないのでムスカリ属から外され、ムスカリミア亜属は花の先を萎ませているのでムスカリ属に留められたのでしょう。


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さてレオポルディア・テヌイフロラはドイツやイタリアから東にウクライナ、イラン、サウジアラビアまで分布しています。
チェコの植物学者イグナツ・フリードリッヒ・タウシュ(Ignaz Friedrich Tausch:1785-1848)さんが発見し、1878年にドイツ生まれの植物学者で、ギリシャでアテネ植物園の園長をしたテオドール・フォン・ヘルドライヒ(Theodor Heinrich von Heldreich:1822-1902)さんが命名しました。

背丈は20〜50cmになり、長さ10〜25mmの細い筒状花を、晩春から初夏にかけて咲きます。
下部の稔性花は緑がかった黄色で、上部の不稔花は花柄がなく紫色をしています。
花の先は少しすぼんでおり、他のムスカリと同じ感じです。

葉は2〜4枚で、長披針形をしています。

葉の間から花序が出てきたときは先のとんがった円錐形をしています。

英名は細花グレープヒヤシンス(narrow-flowered grape hyacinth)です。
種小名は「細い、薄い、肉のない(tenuis)花の(florum)」という意味で、英名のように細い花の形状を指しています。
長いというほどではないのですが、ムスカリの仲間の中では長い花筒を持っています。


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ムスカリ・マクロカルプムは、やはりレオポルディア・テヌイフロラに比べると狭い範囲、クレタ島東部を含むエーゲ海の諸島、トルコ北西部などの岩場に自生しています。

ムスカリ・マクロカルプムは以前はムスカリ・モスカツム・フラブム(M. moschatum var. flavum)という名で知られていました。基本種のムスカリ・モスカツムは成長が遅いかったので流通することはなかったようです。
ムスカリ・モスカツムは花色が始めは紫、後にクリーム色になるムスカリです。

その変種のムスカリ・モスカツム・フラブムは開花すると全てが黄色い花を咲かせますが、後にムスカリ・モスカツムの変種ではなく、独立した種としてムスカリ・マクロカルプムと分類されたのです。

ムスカリ・マクロカルプムは花茎が立って、蕾が総状花序につく頃は白みがかった青紫色をしており、このような色の花が咲くのかと思わせます。
蕾の花筒の先には6個の膨らみ(副花冠)があります。

花筒の先の中心部が開く前には黄味を帯びてきますが、全体が黄色くなる前から、副花冠を含む先の方が茶褐色に色づいてきます。
花筒の先の中心部が開くと(多分開花と言っていいと思います)、全体が黄色くなります。
さらに咲き進むと茶色い斑点が出だし、全部が茶色くなって枯れてしまいます。
バナナのような香りが花にあります。

葉は4〜6枚で、長さ10〜20cmの青緑色の幅1cmほどの細長披針形で、湾曲します。

冷涼な気候ではなかなか成長しにくいようです。しかしムスカリ・マクロカルプムが発見され、容易に育てることができるようになって1948年に王立園芸協会(RHS)のAward of Garden Meritを受けています。
2003年頃から米国で園芸種として流通するようになり、知られるようになりました。

英名は黄花グレープヒヤシンス(Yellow Grape Hyacinth)です。
種小名マクロカルプムはギリシャ語由来で、「大きな(macro)果実の(carpus)」という意味で、大きなタネが稔ることを指しています。

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2017年4月17日 (月)

バビアナ・ピグマエアの名前の由来 
Babiana pygmaea

バビアナ・ピグマエア(Babiana pygmaea:アヤメ科バビアナ属)が咲きました。


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種小名のピグマエアとは「矮小の、背が低い」という意味です。
バビアナ・ピグマエアはバビアナ属では背丈が一番低いのですが、より小型を指すのにはナナ(「小型の」)とつけられるのが一般的です。
しかしバビアナ属に限っては、バビアナ・ナナ(Babiana nana)よりこの種類にピグマエアとつけられています。

というのは、オランダ人の植物学者ブルマン(Johannes Burman;1707 - 1780)さんが1768年に公表した時にはイクシア属と思われていたので、イクシア・ピグマエア(Ixia pigmaea)と名付けたのです。

後に英国の植物学者のベーカー(J. G. Baker;1834 – 1920)さんがイクシア属からバビアナ属に再分類して命名する段階になった時には、すでにバビアナ・ピグマエアよりやや大きいバビアナ・ナナ(Babiana nana )が存在していました。
そのため矮性にもかかわらずバビアナ・ピグマエアという名称にせざるを得なかったのです。
一度定められた種小名は変えられないという命名法の規則のために、ピグマエアのまま使われています。

さてバビアナ・ピグマエアは西ケープ州の南西部、ホープフィールド(Hopefield)からダーリング( Darling)にかけての礫を多く含む粘土地に自生しています。

背丈は10〜12cmで、背丈の割には地中深くに卵形の球茎を持っています。
花は球根から直接花柄を出して、先に花をつけます。
そのため先に出ている葉の付け根あたりに、数輪がひしめきながら咲くことになってしまいます。
横から見ると、アヤメ科なので萼のように見える苞葉があります。

放射対称の漏斗型の花は径8cmほどの大きさで、花披片は卵型をしています。
咲き始めは鮮やかな黄色ですが、咲き進むにつれ白っぽくなっていきます。中心部は濃い紫から茶褐色をしていて、コントラストが鮮やかです。

他のバビアナ属と同様、アヤメ科なので剣状の単面葉(裏も表も裏面)で、濃い緑色の葉は披針形をしています。
この単面葉には縦に走るひだがあり、それに沿って両面に微毛が生えています。
球根から4〜5枚の葉を直立させます。
早くから葉が出てくるので、毎年そうですが、春先の寒さに当たって葉先が茶色くなっています。

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2017年4月16日 (日)

ハンガリーのオキナグサ 
Pulsatilla × magyarica

プルサチラ・マギアリカ(Pulsatilla × magyarica:キンポウゲ科オキナグサ属)が咲きました。


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プルサチラ・マギアリカはハンガリー北部の低山地の草原地帯に自生しています。
プリサチラ・プラテンシス(Pulsatilla pratensis)とプルサチラ・ツインマーマニー(P. zimmermannii)の自然交配種と考えられています。

背丈は5〜30cmと言われていますが、この株は15cmほどの小型です。

葉は羽状に細裂しています。

濃い赤紫の花は長さ2cmほどの小型で、俯き加減に咲かせます。
咲き始めは、花びら(萼)が小さく6裂した合弁花で、裂片がカールしているように見えます。

雄しべは黄色で、緑がかったクリーム色の多数の雌しべは花弁から飛び出して開いています。

古くから知られていたのではなく、1942年にハンガリーの植物学者ワグナー(Wagner, János (Johannes):1870-1955)さんによって公表されました。

種小名のマギアリカはマジャールに由来し、「ハンガリー、ハンガリー人(Magyar)」という意味です。マジャーリカと表記するのが正しいかもしれません。

属名のプルサチラはラテン語のpulso(打つ、鳴る)+illa(指小接尾辞、小さいことを示す語尾)に由来し、花が釣鐘型をしているのでつけられたといわれています。


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2017年4月13日 (木)

緑の模様のスノードロップ 
Galanthus nivalis 'Viridipice'

ガランツス・ニバリス「ビリディピース」(Galanthus nivalis 'Viridipice':ヒガンバナ科ガランツス属)が咲きました。


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4月6日 花があらわれ、外花被に緑の模様がついているのが分かります。それにしても大きな苞葉です。


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3月29日 まだ花は姿を見せていません。


この「ビリディピース」という園芸種は、1916年にオランダの球根園芸家のヨハンネス・ホッグ(Johannes Marius Cornelis Hoog:1865-1950)さんによって、北オランダの普通のスノードロップの中から発見されたといわれています。

外花被に緑の模様があるので他のスノードロップと一目で区別できます。
もっともこのように外花被に模様があったり、緑色をしている園芸種は、「ビリディピース」以降いろいろ作られるようになりました。

内花披には1個の模様があるので、親はガランサス・ニバリス(Galanthus nivalis)であろうと想像できます。
花には香りがあります。

花期の背丈は10cmほど、外花披の長さも2cmほどです。
この株だけなのか、蕾を包み込んでいる苞葉が長く目立ちます。
ニバリスは外花被を大きく開かないので、元気がないように見えます。

サイズに関しては大小があるようですが、大きなサイズのものは3倍体(染色体数が3倍ある)とのことです。
2倍体と4倍体を掛け合わせると種子のできない、姿の大きい3倍体ができます。
この「ビリディピース」はそんなに大きくならないようです。

「ビリディピース」は葉の幅はやや狭く、青緑色をしています。
葉は他を包み込むようには出ず、()型に出てきます。

丈夫で、よく育ち、短期間で球根を太らせるといわれています。
締めった土壌がお気に入りですが、乾いた土壌でもよく育ちます。

緑の斑という意味の「ビリディピース」という名は1922年王立園芸協会の科学委員会で命名されています。

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«チャールース地方のムスカリ
Pseudomuscari chalusicum