2018年10月14日 (日)

枯れつつ咲くタマアジサイ 
Hydrangea involucrata var. multiplex

ヨウラクタマアジサイ(瓔珞玉紫陽花:Hydrangea involucrata var. multiplex:ユキノシタ科アジサイ属)が枯れつつも花を開いています。


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タマアジサイは花序の初めが球形になるアジサイということで名づけられたそうです。
牧野新植物図鑑には本州北部と四国に分布とありますが、園芸植物大辞典には福島県から岐阜県にかけての本州中部と伊豆七島に分布しているとあります。
タマアジサイは他の種類のアジサイに比べ遅く咲き始め、7月~9月に開花します。

ヨウラクタマアジサイはタマアジサイの変異種で、東大教授で、小石川植物園長を務めた中井猛之進(1882 - 1952)さんによって昭和23年に伊豆大島で発見されました。
タマアジサイにはこれ以外に、花の特徴からギョクダンカ(玉段花)やココノエタマアジサイ、シロバナタマアジサイ、テマリタマアジサイが知られています。

タマアジサイは、花弁のように見えるガクが発達した白い装飾花と青紫をした両性花が、普通のアジサイのように額咲き(額のように平たく)に咲きます。

ところがヨウラクタマアジサイには両性花がなく、全て装飾花で、筒状に多数の萼片がつきます。
何重にも積み上がって塔咲き(段咲き)になり、それが仏教具の瓔珞という名につながっています。

そして白い花(萼片)が一斉に開くのではなく、根元から先へと、順に咲いて伸びていきます。
そういう訳でこの時期でも新しい花が見られるのです。

さらにヨウラクタマアジサイは玉が一斉に開花するのではなく、一つが球状に大きくなり、蕾の塊が現れます。
それが開いた頃に、次の蕾の塊が大きくなり、次に開くというようにして、長い間花を見ることができます。

夏の暑い頃は、新しく咲いた花(額)も茶色い色をしていて、咲いているのか、枯れているのかわからない状態です。
秋の気配が濃くなってくると、白からピンクの花らしい花(額)が見られるようになりました。

種小名のインボルクラタは、「総苞のある」のという意味で、蕾を様子を示しています。
変種名のムルチプレクスは「幾重にも重なる、多くのひだを持った」という意味です。

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2018年10月 9日 (火)

トルコのタツナミソウ 
Scutellaria diffusia

7月末に咲いたスクテラリア・ディフューザ(Scutellaria diffusa:シソ科タツナミソウ属)がまた、少し咲き出しました。

本格的に咲けばブログにアップしようと思ったのですが、ポツポツとしか咲きませんでした。
暑さで枯れ出してしまい、涼しくなってから持ち直し、また咲かせ始めました。


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7月末に咲いていた時の様子。下唇弁が濃い赤紫です。



スクテラリア・ディフューザはトルコの海抜900〜2100mの山地に分布する多年草です。
杉や松の森林地帯の岩場の斜面で見かけるそうです。

基部で枝分かれし、立ち上がっていきます。
背丈10〜15cmの高さになり、クッション状に広がります。
茎は紫がかった緑をしています。

上部の葉は5〜10mmの小さい全縁の小判型をしていますが、やや大きい基部の葉は緩い鋸歯がある卵形をしています。
どの葉にも軟毛が生え、やや灰色〜青味がかった明るい緑をしています。

花は春から夏に花茎を立てて2輪対になって咲きます。
花の長さは1cmほどで、赤紫色で、下唇弁には白い模様があります。

ただこの季節に咲いた花は、上唇弁は薄い赤紫色、本当に薄い紫の下唇弁には紫の吹きつけ紋が見えます。

2月にタネを播いたのですが、1年草のようにその年の内に花を咲かせてくれました。
乾燥と暑さには強いようです。

英名はTurkish Skullcap(トルコのタツナミソウ)

種小名ディフューザはラテン語のdiffususに由来し、「散開した、広がった、散った、しみ通った」という意味です。クッション状に広がることを示したものだと思います。

このタツナミソウを1848年に命名したジョージ・ベンサム(George Bentham:1800〜1884)さん は英国の植物学者で、有名な哲学者・経済学者のジェレミ・ベンサムの甥になります。彼の死後、長きにわたってキューガーデンの園長を務めたジョセフ・ダルトン・フッカー(Joseph Dalton Hooker:1817〜1911)さんが草本類の「ベンサムとフッカーの分類体系」(Bentham & Hooker system)としてまとめています。

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2018年10月 2日 (火)

また咲いたスエーデンのムシトリナデシコ 
Silene suecica

7月頃に咲いていたシレネ・スエシカ(Silene suecica:ナデシコ科)が、9月後半にまた咲き出しました。

シレネ・スエシカはアルプスの赤ムシトリナデシコ(Red Alpine catchfly:ナデシコ科シレネ(マンテマ)属)と呼ばれています。


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これは7月に咲いたシレネ・スエシカ


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これが花茎が枯れてしまった後に、また咲き出しましたシレネ・スエシカです。花の大きさは半分ぐらい。
先日の台風で傷んでしまいました。

シレネ・スエシカは、ノルウエーやスエーデンの山岳地帯が元々の自生地ですが、その生息範囲は広く、ヨーロッパアルプスやピレネー山脈のみならずグリーンランドや北米でも目にすることができます。
ただ北米のものは亜種として区別するという考えがあります。
いずれも石灰岩地の草原、河川のほとりや海岸の崖の瓦礫地に咲いています。

シレネ・スエシカは宿根草で、茎は直立し、花が無いときは背丈は15cmまでですが、花の時期は30cmを越えます。
青緑色の葉は滑らかで、全縁で、細めの披針形をしています。
葉は対生し、基部は茎を抱くようにつきます。
シレネ属は茎上部のに帯状に粘液を分泌することが多いですが、シレネ・スエシカはありません。

6月頃から夏にかけて、枝の先が枝分かれし、その先に集散状に5〜20輪つけます。
直径0.8〜1.5cmの花弁の先に刻みのある5弁の濃紅色の花です。
雄しべは10本、雌しべは5本あります。
萼は薄い緑色で紫色の筋が入っています。長さ約20mmの5裂する筒状をしています。

花が開平部(舷部)と筒状(爪部)の境目(喉部)に副花冠のような付属物が細い花弁のように飛び出しています。
花には香りがあります。

よく見かけるムシトリナデシコ(Silene armeria)に比べると、こちらは高嶺の花、凛としています。

属名シレネはギリシャ語のsialon(唾液)に由来し、花茎から粘液を出すものが多いことからといわれています。

種小名のスエシカは「スエーデンの」という意味です。

シレネ・スエシカは、はじめにリンネさんがリクニス属(センノウ属)の植物(Lychnis alpina)として1753年に命名しました。
その後グレイ(Asa Gray:1810 –1888)さんがSilene alpina とシレネ属に再分類しました。
しかしロンドンのハックニー植物園(Hackney Botanic Garden)を創設したジョージ・ロッディジーズ(George Loddiges:1786–1846)さんが、その植物を既にLychnis suecicaと1824年に命名していましたのでこちらが正式な名称となりました。
そして1982年になってスイス人の植物学者グロイテル(Greuter & Burdet)さんたちがシレネ属として同定したようです。
シレネ属は300種類が北半球、南アフリカに分布していますが、シレネとリクニスの違いは、基部の子房が3〜5室に分かれているのがシレネ属、子房が1室だけのものをリクニス属として区別します。
似た花で、構造的にわずかな違いですが、形態分類学的には大きな違いなんですね。

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2018年7月 5日 (木)

中国カンゼ・チベット族自治州のデルフィニウム
Delphinium tatsiense

デルフィニウム・タツィエンシス(Delphinium tatsiense)が咲きました。


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デルフィニウム・タチエンシスは中国南東部の青海省南東部、四川省西部、雲南省北部の2300〜4000mの山地の草原に自生しています。

背が高く花茎は80cmまで伸びるものもあるようです。
濃い緑色の葉は掌状に深裂します。
茎は上部で枝分かれし、6月から9月にかけて1茎に5〜15花をつけます。

5枚の花弁のような萼は濃青色をしています。
中心部の4枚の花弁の内、上弁2枚は、ウサギの耳のように反り返り、白色で先が青色をしています。
この2枚の花弁にはそれぞれ距があり、一番上の1本の萼から伸びる距状のカバーの中を貫いています。
下2枚は左右に分かれ、萼と同じ濃青色をしていますが、中心部が白く、そこに黄色い毛が密に生えています。
この花弁が雄しべや雌しべを覆っています。

花や葉は近縁のコンソリダ(Consolida)属に似ていますが、コンソリダの仲間は5枚の萼の中心部を覆う花弁は左右に開く2枚だけです。
またコンソリダ属は雌しべは1本で、雄しべが多数あり、それが螺旋状に5組にまとまっていますが、デルフィニウム属は雌しべは3〜5本あり、雄しべは8本です。
見た目は同じようですが、花を分解するとその違いが分かります。

種子はオダマキ属のような莢に入っており、我が家では3莢組が一般的でしたので雌しべは3本タイプだったようです。

タネをとろうと思っていたのですが、風の強い日、花茎が根元から折れてしまいました、残念。

中国名を康定翠雀花といいますが、花の名にある康定とは中国の地名の四川省の康定(カングディン)市のことです。
康定地域にはチベット民族が住んでおり、チベット語の中国翻字Dajianlu、Tachienlu、Tatsienluの中のTatsienlu が種小名タツィエンシスの由来になっています。


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2018年6月 7日 (木)

忌まわしい可愛い植物 
Pinellia ternata

ムラサキハンゲ (紫半夏:Pinellia ternata f. atropurpurea:サトイモ科カラスビシャク属)が咲きました。


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ムラサキハンゲはカラスビシャク(烏柄杓:Pinellia ternata:サトイモ科)の苞の内側が暗紫色になる花が咲く品種を呼びます。

カラスビシャクは日本では北海道から九州まで広く分布し、山地の道端や畑地に自生する多年草です。
日本以外では中国、朝鮮にも分布し、中国から帰化した史前帰化植物と考えられています。

図鑑には普通に見かけると書かれていますが、この周辺では見かけたことがありません。田舎(すいません、差別用語です)じゃ普通かもしれませんが町中では珍しいと思います。

地下に径5〜10mmの丸い球根を持ち、1・2枚の葉を出します。葉は長楕円形の小葉3枚で構成されていますが。球根が小さいうちは卵状楕円形1枚であったり、付け根付近で裂けた形をしています。
葉は明るい緑で、薄く、全縁です。

6月頃葉よりも高く、20〜30cmに茎が伸びてきて、先に肉穂花序が出現します。
6cmほどの仏焔包葉は下半分が巻いて筒状になっています。
肉穂花序の下半分に卵形の雌花を多数付いていて、そこから先は鞭状の付属物となって仏焔包葉から飛び出しています。
この鞭状の付属物はウラシマソウとよく似ており、釣り竿のようです。
鞭状付属物が仏焔包葉に隠れている部分に、黄色い無柄の葯だけの雄花が多数巻きついています。

さらにすごいのは花を咲かせる頃になると、葉の付け根や茎の付け根にムカゴを作り、栄養繁殖で増えていくことです。
このムカゴ、親株についているときから葉を出してきます。

種子と球根とムカゴで増えますから、畑地に侵入すると駆除が困難で、嫌われています。

北アメリカでは、侵略的外来種としてされていて、Pacific Bulb Societyの当該記事では
「カラスビシャクは根絶困難な雑草であると後になって分かる忌まわしい可愛い植物の一つだ。この提案を見たなら、キュートな仕草にクラッときても、自制心を失ってはならない。この植物はひょろとしたちびウラシマソウを想像させ、そのちびウラシマソウがあなたの庭にぴったりだと思わせてしまう。あなたが気づいた時にはこの植物はいたる所に姿を見せるようになるのだ。この植物のキュートな仕草の写真を表示すと、こころが折れて育てるかもしれないので、私を責めないように、標本のような写真を掲示する。客観的に見ても、北米太平洋側州では決して好ましい植物ではない。」
と説明されています。
私の所では3年前に1ポットに確認しただけでしたが、今年は至る所で見かけます。すぐに捨てようと思います。

異学名はPinellia tuberifera
英名はmousetail(鼠の尻尾)です。
和名のカラスビシャクは仏焔包葉をカラスのひしゃく(柄杓)に例えたもので、ムラサキハンゲのハンゲとは7月の始め(7月2日ころ)を指す半夏生(半夏生)の略語、半夏のことだと思われます。
属名ピネリアはイタリアの人文学者の植物学者、ガレリオの学問の先生ピネリ(Gian Vincenzo Pinelli:1535-1601)さんに因みます。
種小名テルナタは「3つの、3枚の」というラテン語に由来し、葉の数を指しています。
品種名アトロプルプレアは仏焔包葉が「紫色」であることに由来します。

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