いもり池のアブラガヤ
Scirpus wichurae
妙高高原池の平、中部北陸自然道のいもり池を一周する遊歩道の途中にアブラガヤ(油萱: Scirpus wichurae:カヤツリグサ科ホタルイ属)が咲いていました。
ホタルイ属は世界各地に分布する、主に湿地生の一年草、多年草です。元は約300種を含む属でしたが、最近の研究で5属に分割され、120種ほどがホタルイ属に分類されています。
アブラガヤはわが国の各地に分布する多年草で、日本以外にはインド北部、タイ北部、インドネシア、韓国に分布しています。
日当たりのよい湿原の周辺域や湿った草原などに生育し大きな株を作ります。
草丈は1~1.5mほどに成長し、泥中には太いが短い根茎があり、多数の根出葉を出し、大きな株立ちとなります。
根出葉は長さ40cmほどの線形で、それ以外に花茎に数枚ついています。
花茎は夏に葉の間から数本立ち、断面はやや三角形で、途中に数個の節があります。
花茎は何回か分枝し、花茎の先端には葉身が発達した苞がつき、そこから花序が出てきます。
花序は散房(散形)花序で、細い柄が数本出て、その先に1~5個の小穂がつきます。
小穂は楕円形で、長さは5mmほど、明るい褐色をしています。
はじめは立ち上がっていますが、やがてだらしなく頭をたれるようになります。
秋に赤褐色に熟し、小さな痩果を稔らせますが、痩果は油光りし、油のような臭気があり、和名の由来になっています。
属名スキルプスはイグサまたはそれに似た植物のラテン古名を、古代ローマのストア派の博物学者プリニウス(Gaius Plinius Secundus)がこの植物に当てはめたといわれています。
種小名ヴィヒューラエは、ドイツの法律家で植物学者のマックス・アーネスト・ヴィヒューラ(Max Ernst Wichura:1817–1866) さんに因みます。後年カルパチアやアルプスへ探検旅行をし、さらに1859年にはプルシア探検隊の植物学者として日本を含む東アジア・東南アジアを旅行しています。
テリハノイバラ(Rosa wichuraiana)の学名も彼に因みます。
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