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2019年10月19日 (土)

木成りスミレ  Hybanthus communis

ポンバリア・コミニス(Pombalia communis:スミレ科ポンビリア属)が咲きました。

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以前はヒバンツス(Hybanthus)属に含まれていたポンバリア・コミニスはブラジル東部からパラグアイまで広く分布する亜低木(せいぜい1mほど)で、海抜1500mまでの林縁や明るい林間、道路際などのやや日陰になるような場所に自生しています。

温帯のスミレ科植物は草本が多いですが、熱帯、亜熱帯のスミレ科植物は約20属あり、多くが木本です。

種子を蒔いたのが2019年2月で、木本と理解していたので来年咲くかなと思っていたのですが、1年草のように半年ほどの短期間のうちに咲きました。まだ草丈は10cmほどしかありませんが、上に伸びながら次々蕾をつけています。

葉は先のとがった卵形で、葉縁には粗く小さな鋸歯があります。
茎頂から2〜3枚下の葉柄の付け根から1輪、花弁も萼と同じ緑色の蕾が現れます。

上向きに出ていた緑の花弁は、巻きが緩んで左右に広がると同時に前に垂れ、白色に変わるとそれが唇弁と気がつきます。唇弁は横1cm、縦1.5cmほどで、目立ちます。上部には上向きに上弁か側弁かわからない花弁がちょこっと見えています。

分解すると、上部に隠れていた2枚の花弁が出てきますので、上に出ているのは側弁のようです。
花の中心部に黄色いスポットが入り、その周囲には、本当に薄く紫がかります。

原地では四季咲きだそうです。一日花で、朝早くに咲いて、昼すぎにはしぼんでしまいます。
しぼむ時は唇弁が左右から巻き込んでいきます。

果実はスミレ属とおなじ形の莢に入っていますが、スミレ属のように弾き飛ばすのではなく、莢が3裂した後種子をゆっくりとしぼり出します。

属名ポンバリアはポルトガル王国の政治家ポンバル侯爵(Marquês de Pombal)、正式にはオエイラス伯爵セバスティアン・ジョゼ・デ・カルヴァーリョ・イ・メロ(Sebastião José de Carvalho e Melo:1699-1782)さんに由来しているのだろうと思います。ポルトガルのコインブラ(Coimbra)にポンバル侯爵によって1772年に設立された自然史博物館の中の植物園がコインブラ大学植物園となり、ポルトガルの探検家たちの科学的探究心をくすぐり、世界中の植物が集められました。そのようなことがあって、ある植物にポンバル侯爵の名を属名として献名したようです。

種小名コミュニスは「共通の、ありふれた性質を持つ」という意味で、ラテン語に由来します。

 

中南米系スミレ科植物に関して少し調べてみました。以前の学名のヒバンツス・コミニスは、フランスの植物学者オーギュスタン・サンティレール(Augustin François César Prouvençal de Saint-Hilaire:1799-1853)さんによってイオニディウム・コミニス(Ionidium communis)と命名されました。サンティレールさんは1816年から1822年にかけて、ブラジル南・中部を中心に南米を訪れ多くの動植物の標本を採取しました。特に植物は24,000種も集め、「ブラジル南部の植物('Flora Brasiliae meridionalis' :1825-1832)」にまとめています。

そもそもはリンネの弟子ペール・レーフリング(Pehr Löfling:1729–1756)さんがベネゼラ・オリノコ川流域を探検旅行中に発見した3種のスミレ科植物にカルケオラリア(Calceolaria;「小さな靴」の意)属と名付けたのが始まりです。彼は標本をリンネの元に送ったのですが、その後すぐにベネゼラで病死したので公表できませんでした。
1770年にリンネさんはその名称を「キンチャクソウ(巾着草)」 の学名に用いました。レーフリングさんが採取した3種のスミレは2グループに属し、そのうちの一つはリンネさんがスミレ属と判断し、1763年にビオラ・オポジティフォリア(Viola oppositifolia)と命名しました。それは後にヒバンツス・オポジティフォリアス(Hybanthus oppositifolius)となり、さらにポンバリア属に移されています。

以前の属名のヒバンツスはギリシャ語由来の「反り返る花、猫背の花」という意味で、北アメリカ、メキシコ、西インド諸島を含む中央アメリカ、南アメリカ、アジア、アフリカ、オーストラリアなど、熱帯および亜熱帯地域に広く分布し、100〜115種が知られていました。  
2014年にブラジル人の植物学者でパウラ-ソウザ(Juliana de Paula-Souza)さんはDNA解析による系統発生学見地から9の異なる系統から構成されているヒバンツス属のうち、以前に提唱されていたポンバリア属を立てて、中南米系のスミレ科植物の大部分をポンバリア属に再分類しました。ヒバンツス属は以前は大きな属でしたが、今ではヒバンツス属を含むポンバリア(Pombalia)属、キューベリウム(Cubelium)属、ピゲア(Pigea)属などに分割され、ヒバンツス属はオーストラリアの2・3種を指すだけになっています。

 

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