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2020年5月23日 (土)

高山のネギ Allium cyathophorum var. farreri

アリウム・キアトフォルム(Allium cyathophorum:キジカクシ科ネギ属)が一茎だけ咲きました。

Acyathophorum1

Acyathophorum3

Acyathophorum2

Acyathophorum4

Acyathophorum5

アリウム・キアトフォルムは中国甘粛省南東部、青海省北部、四川省西部、雲南省北西部の海抜2700〜4600mの高山に分布しています。草原や瓦礫地の斜面や岩の割れ目に自生する多年草です。

球根は繊維状の被膜に包まれた円錐状で、1球だけか、華奢な地上部に似合わない太くて長い根の、上下にわたってぶら下がってついています。
葉は春先、松葉のような円柱状ですが晩春になると、翼が出てきて、稜のある葉に変わってきます。幅5mmまでの線形で、今のところ花茎よりも葉のほうが長く、長さ10〜15cmあります。

花の時期は6〜8月といわれていますが、この株は5月に入って、その松葉のような花茎の先が少し赤くなってきました。早く咲いたためか次の花が咲いてきません。
そうすると赤い部分は膨らんで、仏炎苞に包まれた花序に変わっていきます。
仏炎苞は白色をしていますが、それが破れると、中から赤紫色から濃い紫色の花が3〜15輪俯いて出てきます。この株は初花だったためか3輪しかついていません。
花は上向きになることは無く、垂れたまま順番に開いていきますが、鐘形以上には開きません。
花被片は内側と外側にあって、それぞれ3深裂しており、外側の花被片は内側より少し長く、花被片の先は尖っています。

アリウム・キアトフォルムには以下の変種が知られています。

変種キアトフォルム(Allium cyathophorum var. cyathophorum)は自生する場所が海抜3000〜4600mの岩場にやや遅く咲き、花糸は独立しています。花披の頂点は鈍頭で、わずかにへこんでいます。内側の花糸の基部は肩形をしています。
フランスの植物学者ルイ・ビューロー ( Louis Édouard Bureau:1830–1918) さんとアドリアン・フランシェ( Adrien René Franchet :1834–1900) が1891年に命名しています。

変種ファーラーリ(Allium cyathophorum var. farreri)は海抜2700〜3600mのやや低い山地の草原に自生し、やや早く咲くようです。花披は頂部が尖り、内側の花糸は三角形で、基部が輪状に合着しています。甘粛省南東部から四川省北西部に分布します。
イギリスの植物学者ウィリアム・スターン( William Thomas Stearn:1911–2001)さんが1930年(スターンさん19歳の時です!)にアリウム・ファーラーリ(Allium farreri)と命名し、1955年になってスターンさん自身がアリウム・キアトフォルムの変種に変更しています。スターンさんは独学で植物学を学び、18歳で植物学に関する最初の論文を書いています。晩年はロンドン・リンネ協会の会長を務めていました。私はこの方の「Botanical Latin: History, Grammar, Syntax, Terminology and Vocabulary」2004年版を使ってこのブログを書いています。

上から2枚目の写真から判断するに、花弁の先や花糸の基部からアリウム・キアトフォルム・ファーラーリだと判断できます。

種小名キアトフォルムはギリシャ語に由来し、cyathus が「柄杓、枡」、 phor(os)が「 載せた」を意味します。何を示しているのかわかりませんが、花の様子を示しているのだろうと推測してしまいます。
変種名ファーラーリは英国の旅行家で植物コレクターのレジナルド・ファーラー(Reginald John Farrer:1880–1920)さんに由来します。

 

 

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