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2020年7月25日 (土)

ビオラ・ヘデラケアとビオラ・バンクシイ  Viola hederacea & Viola banksii  

ビオラ・へデラケア「ベイビーブルー 」(Viola hederacea 'Baby Blue':スミレ科スミレ属)とビオラ・バンクシイ(Viola banksii:スミレ科スミレ属)が咲き出しました。

この2種のビオラの種子は、2020年の2月に日本スミレ研究会の種子交換で両方ともビオラ・へデラケアとなっているものを手に入れました。
つまりこのブログでのビオラ・バンクシイは、配付時にニューサウスウェールズ産のビオラ・へデラケア(Viola hederacea ex NSW)という名称でしたが、育ててみてビオラ・へデラケアよりビオラ・バンクシイとするべきだろうと判断しました。

 しかしビオラ・へデラケア「ベイビーブルー 」はそのままへデラケアとするのが良いのではないかと結論しました。

 

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ビオラ・へデラケアでブルーの花を咲かせるビオラ・へデラケア「ベイビーブルー 」はオーストラリアの野生種とされていますが、分布地を示した文書に出会えません。たぶんビオラ・へデラケアの選別園芸品種ではないかと推測されます。
ところでビオラ・へデラケアは以前の名で今はビオラ・バンクシイ(Viola banksii )に替わったと記されているサイト(特に日本の)を見かけます。そのため「ベイビーブルー 」もビオラ・バンクシイという名になってしまっています。

ビオラ・へデラケアを全てビオラ・バンクシイに変えてしまってよいものかとモヤモヤしているところで、シェールさんとプローバさん(Kevin R. Thiele and Suzanne M. Prober)の2004年に書かれた論文に出くわしました。そこにはビオラ・へデラケアとビオラ・バンクシーは似てはいるけれど、全く別物であることが記されていました。

シェールさんらの論文から判断すると日本でパンダスミレなどの名前で流通しているビオラについてはビオラ・バンクシイに間違いないようです。
ビオラ・バンクシーはオーストラリア東部海岸部の岬や低地の湿地、熱帯雨林の周縁の湿地に自生しています。
花は明るい紫色と白の2色咲きで、唇弁が他の花弁に比べてずば抜けて大きい長円形から円形をし、上弁は反り返るように開き、側弁には紫の模様に色が変わるほど短い毛がべっとりとついています。
葉は角ばっていると表現した方がよい粗い鋸歯のある円形で、基部は心形をし、深くわん曲しています。

ビオラ・バンクシイは、英国の自然学者で植物採取パトロン(資金援助者)のバンクス(Joseph Banks:1743 –1820)さんと、彼に雇われたスエーデンの植物学者ソランダー(Daniel Charles Solander:1733- 1782)さんがクック船長の太平洋航海に参加して、オーストラリアで収集し、1770年にソランダーさんがバンクスさんの名を献名して公表したビオラです。
しかしこの時に採取された基準標本は失われてしまい、ビオラ・バンクシイがどのようなビオラであったかわからなくなってしまいました。
少し後にフランスの植物学者ラビラリャディエール(Jacques Labillardière:1755-1834)さんはタスマニアで発見したビオラをビオラ・へデラケアと命名し、1805年に公表しました。その結果オーストラリア東部に広く分布しているビオラ群が十把一絡げにビオラ・へデラケアと呼ばれるようになってしまったようです。
しかしシェールさんは、ラリャディエールさんによって収集された標本とオーストラリア東部の沿岸部に分布するビオラが必ずしも同一でないことに気がつき、ラリャディエールさんの基準標本と異なるビオラがビオラ・バンクシーであると考えたのです。
ビオラ・バンクシーはブリスベンからベーテマンズ湾までの東海岸に分布しています。
ビオラ・バンクシイの内、日本でパンダスミレと呼ばれているものには稔性がなくランナーで増えますが、ビオラ・バンクシイと他の似たスミレの交雑種ではないかと推測されます。

これに対してビオラ・へデラケアはタスマニア島を含むオーストラリア南東部の乾燥地からやや湿地、まれに林間に自生しています。花色は紫から薄い青色と白の2色咲きで、唇弁の大きさは日本のスミレに似てやや大きい程度の倒卵形、側弁の毛は奥まった所につき、目立ちません。
葉は粗い鋸歯のある腎形で、基部は切形をしています。葉の色もビオラ・バンクシーに比べると濃い緑色で、表面に粗く毛が生えている葉も見られます。

このような特徴から「ベイビーブルー 」はビオラ・バンクシーではなく、ビオラ・へデラケアと考えた方が、花の形に由来する違和感を拭い去ることができます。
「ベイビーブルー 」は直射日光を避けて、半日陰の明るい場所で育てるとよく茂るようです。
香りがあるという記事がありますが、私は感じません。
「ベイビーブルー 」には稔性があり、果実には紫色の縞が入ります。

種小名へデラケアは「ツタ(ヘデラ)のような」という意味で、バンクシイはソランダーさんの資金援助者バンクスさんに由来します。ソランダーさんがオーストラリアで収集した植物で、バンクスさんの名を冠したものに固有種のバンクシア属があります。
園芸名の 'Baby Blue' 以外に、'Wisley Blue' があります。ウイズレーは英国の地方名で、RHS(王室園芸協会)の植物園があります。

 

 

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